Ledatcham’s blog

ゲームとラノベが好きです🐱

田舎の猫 街に行く 第十四話

田舎の猫 エルフの村に行く
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 そこからの話は早かった。まずテントをそのままインドアに突っ込んでキャンプを撤収。そして男達の所に戻り、眠らせたまま全員をインドアに収納した。どうせ逃げ帰ったとしても、コイツらがロクな人生を送れるとは思わないから良心の呵責など一切無い。

 次にマーシャさんたち4人とリンクした。リンクは私のスキルの一つだ。このスキルは相手が強く思った事や伝えたい事が直接頭の中に伝わる。双方向なのでこちらからも伝える事ができる。まぁ、前の世界ではテレパシーと言われていた超能力みたいなもんだよね。  

 思えばキャティが私の思考をナチュラルに読んでいたのも、恐らく彼女と私がリンクされていたからだろう。いつの間に……。全く油断も隙もない『ダ女神』である。

 テレパシーとの違いと言えば記憶そのものを伝える事が出来る点だろうか。例えば行ったことのある場所のイメージや、知っている人の顔や声なんかも情報として伝える事ができるのだ。

 そしてこれを使えば結構凄いことが出来ちゃうんだよね。そう、私のスキルの一つであるフロントドアは『人の記憶』を頼りに跳ぶことが出来る。つまり、リンクでマーシャさんに村までの道のりや地形、風景のイメージを送って貰えば、一瞬で移動出来ちゃうのだ。ホント便利な代物だよね。

 ちなみに偽の情報やあやふやな記憶はキャンセルされるので、石の中にいる状態にはならない。また、跳んだ先に何かがあると、自動的に座標をずらしてくれる補正機能もあるという安心設計である。これを開発した人を褒めたいね。人じゃないんだろうけど……

 という訳で、男達を積んだ私はエルフの村に一瞬で移動した。フロントドアの前には『帰らずの森』の呪いも無効なのである。マーシャさん親娘を忘れてるんじゃないかって?当然4人ともインドアに入って貰ってるに決まってるじゃない……。一度置いていってしまって、バックドアで戻ったのは若さ故の過ちだ。

 

 

 エルフの村に着いた時には結構夜も更けていて、その日は取りあえず寝ることに。マーシャさん親娘にインドアから出て貰い、彼女たちの家に送った。

 私はマーシャさんたちの使わなくなったテントを譲り受け、インドアの中でキャンプを行う。キャンプなんてホント高校の時以来だ。懐かしい気持ちに包まれながら、私はいつの間にか眠りに就いた。ホント濃い1日だったなあと思いながら……

 翌朝日が昇る前に起きた私は、インドアの中でテントから出て周りを見渡す。実は人攫い達も私と同じ場所に収納してたんだよね。位相を分けようかとも思ったが、起きなければ問題ないし、起きたらまた眠らせてやればいいしと思い一緒にしておいたのだ。あ、位相ってのは部屋みたいなものね。インドアの中は好きなように区切ることができるのだ。別に一人が寂しかったわけじゃないよ、ホントだからね。

 さて、目覚めた私はインドアから出てマーシャさんたちと合流した。マーシャさんたちは既に目覚めていた。エルフの朝は早いのだ。悠久の時の流れを生きている癖に怠惰にならず、早寝早起きの規則正しい生活を送るというエルフの生態は興味深いものがある。規則正しく生活しているから長生きなんじゃないかという意見には、限度があるだろうと答えておきたい。私?私は明け方にもパフォーマンスが最大になるからさ。さっきだってインドアの中で筋トレをしていたくらい朝は元気なんだよね。

 私はマーシャさんたちの家で朝食をご馳走になり、その後村の中心にある広場へ移動した。そしてそこで男達を放出した。すると村のあちらこちらから女性が湧いて来て私たちを取り囲んだ。ざっと見た感じエルフの女性が6割、猫人の女性が2割、ハーフが2割という感じだろうか。人数は100人前後ってとこね。

 「こんにちは、初めまして……」

 挨拶をしたのに返事がない。まるで屍の……いや、こんなに目をギラつかせた屍はいない。女性たちのギラギラした視線は私を素通りして男達に注がれていた。

 「男の人だ……」「男よ……」「男だわ……」

 発する言葉は違うが、皆一様に目がハート型になっている。まるでスイーツを目の前にした女子高生のようだ。

 微妙な気まずさを感じた私は男達を目覚めさせることにした。

 「ウェイクアップ」

 目覚めの呪文。これを使えばカビ○ンだって目覚めさせることが出来る強力な呪文だ。ただ、残念ながら永眠した者には無効である。

 呪文を唱えた途端、男達は目覚め……

 「いてぇーっ」「ひぃ~っ 死ぬ~」「助けて下さいぃ~。何でもしますからぁ~」

 阿鼻叫喚の嵐が巻き起こった。

 「しまった……治療を忘れてたわ。エリアヒール!」

 男達の怪我が瞬時に回復した。右腕が肩からポッキリ折れていた親玉もちゃんと元通りになった。

 彼等は一瞬何が起こったか分からずポカンとしていたが、痛みが消え体が元通りになった事に気づくと、私に向かって駆けよってきた。

 「あ、やんのか? やんのか、コラ? 調子に乗ってると音子(ねこ)ビーム喰らわすぞ!?」

 チュピチュピしながら、前の世界の煽り文句を言い放つ私に向かって男達は跪き、感謝の言葉を口々に述べ始めた。

 「怪我を治してくださってありがとうございます!貴女は命の恩人ですっ」

 ……君さ、マッチポンプって意味分かる?

 「もう人攫いからは足を洗いますっ!心を入れ替えて真っ当な人間になりますっ」

 うん、立派な心がけだね。でも君達攫われてきたのに気づいてないね……

 「姐御、一生ついていきますっ!」

 それはキモいからヤメロ!

 このままでは収拾がつかないので、私はマーシャさんに丸投げする事にした。

 「それじゃ、マーシャさんにマイクをお返ししまーす。君達、あのエルフの女性の話をよっく聞きなさいね」

 そう宣言すると私は黙って口に手を当て胸を反らした。いわゆる○ョジョ立ちである。

 皆の視線が向くとマーシャさんはゆっくりと話し始めた。