Ledatcham’s blog

ゲームとラノベが好きです🐱

田舎の猫 街に行く 番外編 我が麗しのグリーンフィールド

田舎の猫 野外音楽堂で歌う
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 ──1ヶ月の時が流れた。季節は移り変わり夏真っ盛り。連日暑い日が続いている。

 

 学校は夏休みに入り、私たちは高校生活最後の長期休暇を過ごしていた。そろそろ卒業後の進路を考えなければならない時期になってきていたが、私はまだ何も決められないでいた。

 

 アオちゃんはというと、相変わらずアイドルと町の観光大使の仕事で忙しいみたいだ。そしてアオちゃんの提案通り、私たちも町の夏祭りコンサートに参加することになった。

 

 夏祭りコンサートは町民参加型の催しなので、学生である私たちが参加しても問題ないとのこと。そして今日は最終リハーサルの日だ。夏祭りコンサートは明日に迫っていた。

 

 「これが終わったら本気的に進路を考えないといけないよね。気が重いなぁ」

 と私が言うと

 「私はぁ、家業の手伝いをする事になっているのでぇ……」

 とメイが答えた。

 「あれ? メイは進学しないんだ?」

 「私はぁ、あんまりお勉強がぁ……」

 うーん、フォローが難しいな。まぁ確かに私もメイも成績はあまり良くないからね。

 

 「なんや、ずっと一緒にやるんとちゃうんか? 私はそんつもりやったけど」

 「いや、流石にアイドルはねぇ……」

 「知事のお墨付きやん、私ら」

 アオちゃんが皮肉るように笑いながら言った。

 「あはは……」

 

 あれ以来あのパワハラ知事からは何も言ってくる様子はなかった。私たちも忘れかけていたのだが、思い出すと今でも言いようのない怒りがこみ上げる。でも、アオちゃんと一緒ならそれも良いかなと最近では思えるようになってきた。


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 ──そして夏祭りコンサート当日になった。コンサートは夕暮れから行われる。湖を源流とした町の中心を流れる河の畔では、先ほどより花火が打ち上げられている。町全体がお祭り気分に包まれていた。

 

 いよいよコンサートが始まり、私たちが歌う時間になった。この1ヶ月の練習で私たちの実力は、文化祭の時よりもレベルアップしていた。

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 私たちの歌声が観客の心を掴んでいると実感できた。観客と一体になった満足のいくパフォーマンスが出来たと思った時、ソイツらはやって来た。

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 「おい、お前ら歌うのを止めろ!」

 せっかくのいい気分を台無しにされて、アオちゃんがブチ切れた。

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 「何寝ぼけたこと言っとんやっ!このツルッ○ゲっ!!」

 「貴様ぁ~っ、副知事のワシに向かって!」

 あー、パワハラ知事のお仲間かぁ。じゃ、後ろにいるのは悪名高き威信軍団ね。あ、アイツ知ってる。ヤマキとかいう男だ。アイツの爬虫類っぽい喋り方、私苦手なのよね。ウチの高校でも『こんな大人にはなりたくない』と言われてたりする。

 

 コンサートを中断されて観客もブーイングをして怒っている。そしてどこからともなく湧き起こる「帰れ! 帰れ!」のコール。

 

 「お前らぁっ! ワシは仕事で来とるんじゃっ。帰れと言うならお前らが帰れっ!!」

 なんか、どっかのミュージシャンが似たような事言ってたよなぁと他人事のように考えていると、副知事はますますヒートアップして言った。

 

 「この湖に万博フェスティバルの会場を作るんじゃっ! 邪魔をするなっ!!」

 

 万博フェスティバルって知事が言ってたフェスティバルの事よね。様々な外国の偉い人が参加するっていう。確かお隣の知事と共同して計画してるらしいけど、領民の支持が全然得られてないらしい。学校に働きかけて子どもたちを来させようとしてるみたいだけどねぇ……

 

 まず学校ごと子どもたちを招待する。そして楽しい思いをさせる。帰ってから子どもはもう一度行きたいと言うだろう。そうやって今度は親を釣るのだ。

 

 使い古された手なので、学校も参加を渋っている。だって引率する先生方の労力は大きいし、学習は遅れるしでメリットがないからだ。

 

 あれ? でも、ここにフェスティバルの会場を作るって事は、ここでコンサートを行えるって事? 知事がアオちゃんに忖度した?

 

 「この湖を埋め立てて知事の館を作るんじゃ。今日はその下見に来たんじゃ」

 

 待て。知事の館? 湖を埋め立てる?

 

 そもそも万博フェスティバルの会場に、何で知事の館がいるのかが分からない。そして湖を埋め立てるって……

 

 この湖はグリーンフィールドの水源を担っている。今ここで埋め立て工事なんてしたら、この酷暑の中、町の人々は水不足に苦しむことになるじゃないか。

 

 私は湧き上がる怒りに我を忘れそうになった。

 その時──

 「このド畜生共がぁ~っ!」

 会場から飛び出す一陣の風。それはまごう事なき私の師匠だった。

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 それを見た私は思わずステージを飛び降り、師匠に肩を並べていたのよ。